冬季の嘔吐、下痢

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2017年11月号

嘔吐、下痢は、大変つらい症状です。原因として、まず頭に浮かぶのは、食中毒でしょうか。
しかし、実際多いのは、感染性胃腸炎という疾患です(急性胃腸炎、ウイルス性胃腸炎、腸感冒等と呼ばれることもあります)。食中毒は、汚染された食品が原因で発症したと考えられる場合で、腸管出血性大腸菌(O157が代表)、カンピロバクター、サルモネラ等の原因細菌が有名で、夏季に多いイメージです。
しかし、感染性胃腸炎は、冬季に多いのが特徴で、嘔吐、下痢を起こすウイルスの代表がノロウイルスです。汚物(吐物や下痢便)への接触、汚物からの飛沫感染 ウイルス汚染の食物(不十分な加熱)の摂取等が原因で感染しますが、ヒトーヒト感染もあります。

1、診断と治療

ノロウイルス抗原検査は、3歳未満、65歳以上が保険適応ですが、直接の採便が必要

(0.5g程度)で手間なのと、多くの方では自費検査となりますので、実際にはあまり行われていません。症状と経過で診断することが多いようです。

ウイルス性腸炎の治療は対症療法が主で、通常、数日で症状は改善します。

2、感染予防

ノロウイルスの流行は毎年のように経験されますが、そのワクチン作成が困難なため、

予防接種は行われていません。(現在開発中だそうです)

嘔吐、下痢、感染性胃腸炎の方が発生した場合は、感染を広げないような対策が必要です。患者様本人、家族とも、アルコール、石鹸等での手指消毒が重要です。 

トイレのフタ、便座、レバー、ドアノブ、手すり等を消毒し、接触によるヒトーヒト感染を防ぎます。市販のノロウイルスに有効な消毒薬を用いるのが良いでしょう。

3、感染者の嘔吐物の処理 

嘔吐物、下痢便には多くのウイルスが含まれるので、その処理には特に注意が必要です。事前に、使い捨ての手袋、マスク、エプロン、靴カバーを100円ショップ等で購入、準備しておきます。必要なものがセットになった嘔吐物処理キットも販売されています。

嘔吐物で汚染が発生した場合、まず、患者様は別の部屋に移動させます。

ノロウイルスは乾燥すると空中に舞うので部屋を換気します。手袋とマスクをし(できればエプロン、靴カバーも)、新聞紙、ペーパータオル等で汚物を覆い、上から濃い消毒液(表参照)を静かにかけ、へらなどを使い外側から内側に汚物をまとめ、取り除き、ビニール袋に密閉します。除去後の床は、薄い消毒液(表参照)で消毒、後は水拭きして、消毒薬を除きます。汚物の入ったビニール袋は二つ目のビニール袋にいれ、使用した手袋、マスク、エプロン、靴カバー等も入れて、二重のビニール袋にし、廃棄します。吐物の付いた患者様の衣服、タオル等も、感染源となりますので、同時に廃棄するのが無難です。

*市販の塩素系漂白剤を用いた次亜塩素酸ナトリウム入りの消毒液の作り方

濃度 希釈法 用途

1000ppm消毒液
(濃い消毒液)

水1Lに20ml(キャップ1杯弱)をいれる 嘔吐物やウイルスの感染力をなくす

200ppm消毒液
(薄い消毒液)

水5Lに20ml(キャップ1杯弱)をいれる 汚染箇所のふき取り



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