2020年06月号
健診で、“血糖が高く糖尿病です”、と診断されたあなた、スルーしていませんか?
糖尿病は当初無症状で元気でも、高血糖を放置すれば、さまざまな合併症を生じ、生活の質が悪化する疾患です。その結果、糖尿病の方の平均寿命は、糖尿病でない方に比べ、短いという現状があります。
糖尿病の合併症には、以下のものがあります。
急性合併症
- 糖尿病ケトアシドーシス インスリン不足で生じる緊急事態、ひどいときは昏睡になります。1型糖尿病の発症時、インスリン注射の中断、感染症の合併時等に起こります。
- 高浸透圧高血糖症候群 異常な高血糖と脱水の状態です。2型糖尿病の高齢者に多い傾向があります。感染症、脳血管障害、手術、高カロリー輸液、ステロイド服用等を契機に発症します。
慢性合併症
血管の障害であり、細小血管症①~③(細い血管の障害)と大血管症④(動脈硬化症)に分けられます。両者が併存している場合もあります⑤。
- 糖尿病性網膜症 網膜血管に障害が起こり、進行すれば、失明の危険があります。
- 糖尿病性腎症 腎糸球体が障害され、早期には微量アルブミン尿、進むと持続性蛋白尿となり、さらに進むと腎不全期となり、血液透析が必要となります。
- 糖尿病性神経障害 神経の働きが障害され、しびれ感、痛み、冷え等の症状が出現。自律神経障害もおこり、起立性低血圧、発汗異常、難治性便秘、インポテンツ等が起こります。
- 糖尿病性大血管障害 太い血管の障害(動脈硬化)が進行し、心筋梗塞 狭心症 脳梗塞 脳出血 閉塞性動脈硬化症等を発症します。
- 足病変 潰瘍と壊疽がみられます。 血流障害(動脈硬化)と神経障害が合併している場合が多く、悪化で下肢切断も余儀なくされます。
糖尿病治療のゴールは、健常者と同様な生活の質を保ち、健常者と変わらない寿命を全うすることです。そのためには、深刻な影響を与える合併症の発症を抑制することが、必要です。その合併症予防のためには、血糖コントロールが重要です。
血糖コントロールの指標としては、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が、過去1~2か月の平均血糖値を反映することがわかっており、有用です。
糖尿病治療の目標は、合併症予防のため、HbA1c7.0%未満を保つのがよいとされています。日々の食事、運動に気を付け、適正体重を保ち、定期的な受診、検査を行い、治療を中断しないようにしましょう。